【健康】記憶について:入院した時の話(その2)
さて、顔面骨折で入院した僕は、数日後手術をする(顔の骨を金属で固定)ことになりました。
そして、固定のため口が糸でしばられ、開けられないようになりました。食事は流動食です。
やがて手術です。全身麻酔で、全く気づかないまま手術が終わっていました。でもこのときは、時間の経過を意識することができたんですよね。
それからは、安定するまでずっと入院です。毎日が過ぎていきました。ただし、ちょうど大学の試験の時期でしたので、途中で病院を抜けて顔にギブスをしたまま試験を受けました。
まあ、そういう事情なので、試験当日受けられず別途追試を受けた科目も含め大目にみてもらい、単位はすべてゲットできましたけど。
一月がたち、ようやくギブスをはずし、退院しました。
僕が乗っていた自転車は大破して使い物にならず、新しく自転車を買い直しましたね。
でも、それで終わりではありません。半年後、今度は顔に入っている金属をはずす手術があるんです。
なので、夏休みになると、また入院です。今度は1週間ほどでした。しかも、部分麻酔による手術です。
手術中、メスなどの金属が当たる音が妙に大きく聞こえました。
手術後、友人たちが見舞いに来てくれました。みんなでお金を出し合って、本を何冊か持ってきてくれたんです。
「好きそうな本」を選んだということでしたが、中に澁澤龍彦の本がありました。
「ああ、僕はこういうものが好きだと思われているんだな」と妙に納得するとともに(実際そうなのですが)、その本は持っていたので、返品してもらいました。
退院時、父が車で迎えに来ました。車に乗り、帰る途上、車からAMラジオが流れてきます。
コメディNo.1の2人が、芸人がかんだ時の話をしていました。
誰かがかんだ、ということで、前田五郎さんが「せやけど、あの人、かんではったで」というのを自分でもかんで「せやけど、あの人、かいてはったで」と言いました。
そのあと、坂田利夫さんが「かいたて、あんた...」とあきれたような声を出していました。
父の手前、気づかないふりをしていましたが、心の中では大笑いしていました。
あの失われた記憶のことを考えると、いつも思い出すシーンです。