【翻訳】野良翻訳:P.G.ウッドハウス著 THE MAKING OF MAC'S/Kちゃん(第10回)
誰のことかはわからなかったが、全員が笑った。それからいつものように料理をほめているのが聞こえた。間違いないさ、ジュールズは腕に絶対の自信をもっていたからな。フランス人ってのはみんな、芸術家気質さ。わしらが仲間になると言ってやった時には、まるで水に花を入れたみたいにほころんだよ。
「ほら、みろよ、ついに!」ジュールズはわしを抱きしめてキスしようといながら言った。「うれしいことに、俺たちの名声は世界に広まったんだよな。いい夕食の組み合わせになるようにと祈ってたおかげでさ、ついにやったんだ」
まあ、その通りになりはじめたんだな。マックファーランドの店で一晩に十食の高級ディナーが出たとすごく話題になったよ。わしも興奮したな。たまにゲルフのことをなつかしく思ったこともなくはないさ。
五日目の夜、店がすごく混んでオディーやロマーノみたいになって、わしとわしを手伝っている二人の若者がいつもの倍働いていた時、わしはふいに思いついて、ケイティのところに行って、ボトルを持ってすごく丁寧にかがみこんで、こうささやいた、「大賑わいさ。昔働いてくれてた時みたいなすばらしい景気だよ」あの娘がわしに微笑み返してくれた様子で、何が言いたいかわかってくれたと思ったよ。
アンディーはいつものように店の中を見て回っていた。すれ違う時に奴に言ってやったよ、「ケイティはわしらの誇りだな、前に働いていた店を手伝ってくれるなんて」奴は言った、「仕事に戻って下さい」それでわしは戻った。
ケイティがドアの方へ戻ってきて、出て行く時にわしに声をかけた。
「あの人私のこと何か言ってた? ビルおじさん」
「いや、何も」
ケイティはそのまま出て行った。
(後記)
ここは、箸休め的な部分ですね。
嵐の前の静けさです。