【翻訳】野良翻訳:P.G.ウッドハウス著 THE MAKING OF MAC'S/Kちゃん(第17回)
いつもこういう危険があるんだ、旦那、アンディーみたいなタイプは自分のやり方で真っ直ぐ進んで、やっちまうんだな。問題が自分の身に起こる、しかもいっぺんに。時々思うんだが、人生にはいずれにせよ災難が降りかかるが、それがすこしずつ起こって、いわば薄く拡がるような奴もいれば、いっぺんに起こるような奴もいるーードバッとな! まさにアンディーに起こったのがそれだ、わしが手紙をアンディーに見せた時にそれが起こったとわかったよ。「頑張れ、若造、これはお前に起こったことなんだからな」って言ってやるところだった。
劇場にはそんなには行かないんだが、行くとしたら新聞がこぞって罵っているような、大げさな芝居がいいな。新聞は、本物の人間ならそうはしないって書くだろうさ。わしに言わせれば、旦那、するんだよ。わしは一度、ステージ上で思いがけない手紙を読む男を見たことがある。奴はあえいで目を回し、何か言おうとするが言えず、転げ落ちないように椅子をつかまなきゃならなかった。新聞記事には、こんなことは全く間違っている、実際にはそんなことはしないだろうって出てたよ。冗談じゃない、新聞が間違っていたのさ。手紙を読んだ時にアンディーがしなかった動作はひとつもなかった。
「何てことだ!」アンディーは言う。「ケイティが......いやそんな......間に合ったんですか?」と言う。
それから奴はわしを見た、ちょうどごくりと息を飲むのが見えたよ。
「死んでいるのかという意味なら」わしは答える、「いや、死んでいない」
「よかった!」
「まだな」とつけ加える。
次の瞬間わしらはその部屋を出てタクシーに乗り、素早く移動した。
アンディーはしゃべる方じゃなかったから、タクシーの中でもしゃべらなかった。階段を登るまで一言もな。
「どこ?」ときく。
「ここだ」と答える。
それからドアを開ける。
ケイティは窓の外を見て立っていた。ドアが開いたので振り返り、アンディーを見た。何かを言おうとするかのように唇が開いたが、何も言おうとしなかった。アンディーも、何も言わなかった。ただ見つめ合っていた。
「ああ、君は」とアンディーが言う。
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その後のことは見たくなかったんで、ドアを閉めて飛び降りた。わしはミュージックホールの後半部分を見に行った。だが、なぜだか知らんが、ひかれることはなかったな。いいミュージックホールの芝居を見ようと思ったら、集中しなきゃね。
(後記)
いやー最後になってウッドハウスの上手い部分が炸裂しましたね!
アンディーとケイティの最後の部分をあえてカットするなど、なかなかできないでしょう。
それにしても、ミュージックホール云々の所は、どういう意味があるんでしょうね?
やっぱり、「Kちゃん」という表題は少し違うような気がします。主にマックの店に関する事が書かれていますし。
原題通り、「マックの店繁盛記」または「マックの店」でいいのでは?